自宅で出来る変形性膝関節症の予防・リハビリまとめ

この記事を読んでいる方は、「膝が痛くて悩んでいる」もしくは「変形性膝関節症と診断された」、または「身近な人が変形性膝関節症に悩んでいる」といった方々だと思われます。

厚生労働省の調査では、日本では約3000万人が変形性膝関節症にかかっていると推計されています。50歳以上の約2人に1人の割合にあたるとされています。変形性膝関節症は決して珍しいものではありません。

この記事では変形性膝関節症に悩んでいる方に向けて、理学療法士の立場から自宅で出来る効果的な筋トレ・ストレッチや運動などをお伝えしていきます。

自宅で出来るストレッチ・筋トレや運動などを紹介しますが、基本的には自己判断せずに医療機関に一度受診することをおススメします。

どの分野でもそうですが、絶対的・100%というものは存在しません。変形性膝関節症になった原因1つにおいても、先天的な遺伝・肥満・筋力低下・柔軟性低下・猫背姿勢など様々であり、症状の種類・度合いもそれぞれです。

そのため、研究により効果があったとされる筋トレやストレッチなどにおいても、人によっては効果が期待出来ないこともあります。

以上から一度専門家に診てもらい、意見をもらうことをおススメします。

大腿四頭筋の強化

【レッグエクステンション】

座った状態で膝を伸ばします。重りが足りない時は錘を付けたり、セラバンドを使用することで負荷を上げることが出来ます。

2~3回しか出来ないような高負荷で行うと関節の圧力が強くなる可能性があるため、10回~20回程度続けられる負荷で行うことをおススメします。

【スクワット】

椅子など固定された物を把持し、お尻を下げるイメージでしゃがみ込みます。出来るならば太ももが床と平行になる位置までお尻を下げてみて下さい。

目安は10~20回程度連続して出来るような負荷で行うことをおススメします。

※重度の変形性膝関節症で膝が痛む時は控えて下さい。

【踏み台昇降】

台や階段などを使用し昇ったり降りたりを繰り返すことで大腿四頭筋を鍛えることが出来ます。

※重度の変形性膝関節症で膝が痛む時は控えて下さい。

お尻の筋肉(大殿筋・中殿筋・小殿筋)

【サイドレッグレイズ】

横向きに寝た状態で足を上に上げる運動です。気持ち斜め後ろに上げるイメージで上げることがポイントです。

サイドレッグレイズは少し難しい筋トレ種目です。10~20回程度連続して行うことが出来ればよいですが、難しい場合は可能な回数から始めていき徐々に回数を増やすようにしてみて下さい。

【クラムシェル】

横向きに寝て膝を90度に曲げた状態・座っている状態で膝を開く運動です。

クラムシェルは比較的簡単な運動です。可能な回数を繰り返すことをおススメします。負荷が足りない時は両太ももにセラバンドを巻いて行うことをおススメします。

ハムストリングス(太もも裏の筋肉)の筋トレ

【レッグカール】

セラバンドを足に巻いた状態で片膝を曲げる運動です。10~20回程度を目安に行ってみて下さい。

【ブリッジ】

膝を曲げた状態で仰向けに寝た状態からお尻を上げます。膝を曲げすぎるとお尻の筋肉を多く使うようになるため、お尻を上げた時に膝が90度より曲がらないような足の位置で行います。

10回程度を目安に行ってみて下さい。

ふくらはぎの筋トレ

【カーフレイズ】

つま先立ちを繰り返すことでふくらはぎの筋トレになります。イメージとして身体全体を真上に上げるイメージで行います。10~20回程度を目安に行ってみて下さい。

変形性膝関節症ではストレッチ単独で大きな改善をもたらすエビデンスは多くありませんが、筋力トレーニングや有酸素運動と組み合わせることで痛みの軽減・関節の可動範囲の拡大を図ることが出来ます。

大腿四頭筋(太もも前の筋肉)のストレッチ

立っている状態または横向きに寝ている状態で踵とお尻を付けるように膝を曲げます。

ハムストリングス(太もも裏の筋肉)のストレッチ

座っている状態で片足を伸ばし、上体を伸ばした足の方に傾けます。

お尻のストレッチ

仰向けで片膝を抱え込むことでお尻のストレッチになります。

ふくらはぎのストレッチ

壁に手をつき片足を後ろに伸ばし踵を床につけます。

変形性膝関節症に対して、有酸素運動は痛みの軽減・関節可動範囲の拡大・体重管理の観点から非常に推奨度が高く、国際ガイドラインでも中心とされています。

ノルディックウォーキング

ウォーキングは有酸素運動の代表の1つです。ノルディック杖を使用することで膝の負担を減らしながら、ウォーキングができます。

時間としては20~30分間を目安として始めてみて下さい。

自転車エルゴメーター

自転車エルゴメーターは膝関節を圧縮する・衝撃が小さい状態で出来る有酸素運動です。

15~30分間を目安として始めてみて下さい。

※膝の曲げすぎには要注意です。

水中ウォーキング

水中運動は水の浮力により関節の負担を減らすことが出来ることに加えて、水の抵抗により筋肉には負担をかけることが出来ます。

つまり、関節を守りつつ筋肉を増やしたり、カロリーを消費して体重を減らすといった様々な良い効果が期待できます。

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