【理学療法士が解説!】糖尿病の仕組み・合併症・初期症状・予防方法とは?

糖尿病になると様々な合併症があります。糖尿病そのものよりも怖い合併症が多々あり、多くの方が糖尿病の合併症として脳卒中や心臓病、足の壊死などを一度は聞いたことがあるかもしれません。

そんな糖尿病ですが、日本では厚生労働省の調査では令和5年で、糖尿病で現在治療を受けている患者総数は552万3,000人(男性317万7,000人、女性234万6,000人)、となっています。

日本人の約20人に1人が糖尿病であるということであり、無視出来なくなっています。

また、日本人は欧米諸国と比較し、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンを分泌する能力が低く、糖尿病になりやすいと言われています。

軽度の肥満や一見普通体型の人でも糖尿病になっていることがあるので、日本人は特に糖尿病にならないように気を付ける必要があります。

ここでは糖尿病とその予防について解説していきます。

糖尿病とは?

糖質の吸収と流れ

私たちは普段の食事で炭水化物から糖質を得ています。ご飯などの炭水化物は口内・胃で分解され、腸で吸収されることで血液に血糖として移動します。血糖は膵臓のインスリンによって、肝臓・筋肉に身体活動のエネルギー源としてグリコーゲンとなり蓄えられます。

そして残ったものが脂肪へと置き換わります。

糖尿病の方の糖質吸収と流れ

糖尿病の方は膵臓によるインスリンの分泌量が少ない為、血糖を肝臓・筋肉のグリコーゲンとして蓄えることが難しくなり、血糖として血管内に残ります。血糖が高い状態が続くと血管が損傷し、将来的な脳卒中・心臓病などの疾患に繋がってしまいます。

糖尿病とは

生活習慣病やその他の原因によって膵臓の機能が低下し血糖値を下げることが難しくなった状態

糖尿病の種類

糖尿病には大きく分けて1型糖尿病2型糖尿病があります。

【1型糖尿病】

1型糖尿病とは何らかの原因により膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊されてしまい、インスリンがほぼ出ない状態で糖尿病を発症します。

糖尿病患者全体の20~40%であり、体格はやせ型が多いと言われています。

年齢層は若年者が多く、インスリンがほぼ分泌されないため治療には継続したインスリン注射が必要不可欠です。

【2型糖尿病】

2型糖尿病とは長年の食事の偏り・運動不足などにより血糖値が高い状態が続き、膵臓の過労働により膵臓の機能が弱くなり、インスリンの分泌量が徐々に減っていくことで発症します。

糖尿病患者全体の60~80%以上であり、肥満体型の方が多いと言われています。

年齢層は中高年が多く、インスリンを分泌する量が徐々に減っているため、食事や運動で血糖値をコントロールしたり、必要に応じて薬・インスリン注射を使用します。

糖尿病の合併症

糖尿病で怖いのは、糖尿病により発症する合併症です。糖尿病の合併症により大きな障害をおったり、場合によっては亡くなることもあります。

糖尿病になると合併症の発症に気を付けなければいけません。

糖尿病による合併症は「しめじ・えのき」と覚えます。

し:神経障害

め:目の障害(網膜症)

じ:腎臓の機能低下

「し・め・じ」の合併症は比較的細い血管が損傷されることで生じる合併症です。

1.神経障害

糖尿病になり、高血糖状態が続くと血管が損傷し、全身の末端に血液が循環しにくくなります。その結果、末端から酸素と栄養が十分にいきわたらなくなります。末端の神経にも十分に酸素と栄養がいきわたらなくなり、足先が痺れるようになります。糖尿病が進行すると手の指先も痺れるようになってしまいます。

また、足先の感覚が分かりにくくなり傷ついても分からなくなることがあります。

2.目の障害(網膜症)

糖尿病による網膜症は日本人の失明原因第2位となっています。目の毛細血管が損傷することで酸素や栄養が十分に届かなくなることで生じます。かなり進行しても自覚症状が出にくいのが特徴で、ある日突然目の前が真っ暗になることが多いと言われています。

3.腎臓の機能低下(糖尿病性腎症)

糖尿病腎症は、高血糖の状態が長く続いた場合に腎臓が傷んでしまうことで発症します。糖尿病が原因で腎臓の機能が低下した場合を、「糖尿病腎症」と呼びます。

糖尿病腎症の発症早期は無症状であることが多いですが、腎機能が低下すると、身体の調節機能が弱まることで浮腫み・高血圧・食欲不振などの様々な症状が生じます。

さらに進行し末期腎不全に至ると、腎臓の機能を代行する治療である「透析療法」が必要になります。

え:壊死

の:脳梗塞

き:虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)

糖尿病が進行すると細い血管だけでなく、太い血管の損傷による合併症が生じるようになります。

太い血管が損傷することで生じる合併症を「え・の・き」と覚えます。

1.壊死

血管が損傷されることで身体の末端には十分な酸素と栄養が届きにくい状態です。糖尿病患者は神経障害により足の感覚が分かりづらく、足が損傷していても気づかないことがあります。例として、寒い時期にコタツ・ヒーターなどで足先を温めている時に火傷になっていることに気づかない人もいます。

損傷した足に十分な酸素と栄養が回らないため、回復が遅くなり、壊死・壊疽に繋がることがあります。

また、損傷した部分から細菌などの感染症にかかることで壊死・壊疽に繋がることもあります。

2.脳梗塞

糖尿病が進行すると動動脈硬化に繋がります。動脈硬化が進行すると血管のスペースがなくなり、血栓ができやすくなります。血栓で脳への血流がせき止められてしまうと、脳梗塞になります。

脳梗塞になると運動麻痺・失語・遂行機能障害など様々な障害が生じる可能性があります。

3.虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)

心臓へとつながる血管が損傷することで動脈硬化を起こし、血管が狭くなることで狭心症、詰まってしまうと心筋梗塞になってしまいます。

糖尿病の初期症状

2型糖尿病は症状が顕著に表れず、中々気づきにくいものです。

2型糖尿病は膵臓の機能が低下することで生じるものなので、基本的に糖尿病になると完治することはありません。継続して付き合っていく必要があります。

そのため、高血糖による初期症状を知っておくことで糖尿病の初期から進行を予防することに繋がります。

1.すぐに口が渇く

糖尿病の初期症状としてすぐに口が渇きます。口が渇くため、水分摂取を頻繁に行うようになります。最近、口が渇きやすい、水分摂取を頻繁にするようになった人は要注意です。

2.食べているのに体重が減る

炭水化物を食べるとインスリンが分泌されて、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして身体活動のエネルギーとして蓄えられます。しかし、糖尿病の方ではインスリンの分泌量が不足しているため、十分にグリコーゲンを生成することが難しいです。そのため、身体活動のエネルギーを筋肉や脂肪を分解して得ようとするため、体重が減ってきます。

3.身体が疲れやすい

健康な人でも食後は一時的に高血糖状態になり、眠気や疲労感に襲われます。健常な人はインスリンの働きで血糖値のバランスが取れれば眠気や疲労感も改善されます。

しかし、糖尿病の方では、インスリンの分泌量が少ない為、血液内の糖分が常に高い状態となり、疲労感が常態化してしまうのです。

4.トイレの回数が多く、尿量が多い

血糖値が高い状態では浸透圧により尿から糖分を水分と共に排出しようとします。

浸透圧を生ずるので尿に排泄される水分も増加して尿量が増えます。尿量が増加すると脱水傾向となるためのどが渇くようになり飲水量が増えるので、いっそう尿量が増えるという悪循環に陥ります。

糖尿病の治療と予防

 糖尿病による合併症を起こさない、また合併症のある方は今より悪くしないことにより、糖尿病がない人と変わらない寿命と生活の質を保つことです。

糖尿病による合併症を予防するためには、血糖コントロールを良好に保つことが大切です。

血糖値は食事前後・運動前後などで大きく変動するため、あくまでその瞬間の血糖を知ることになります。血糖値の測定では血糖をコントロール出来ているのか分かりません。

血糖コントロールの指標としてHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)があります。

血糖値は常に変化していますが、HbA1cは濃度が安定しています。

赤血球に含まれるヘモグロビンには血液中の糖と結びつく性質があり、一度糖化したヘモグロビンA1cは、元の状態には戻りません。ヘモグロビンの寿命は約4ヶ月であり、HbA1cの値を調べれば、過去1~2ヶ月の血糖の平均的な状態を知ることができると言われています。

【血糖正常化を目指す際の目標】
適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標
【合併症予防のための目標】
合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする。血糖値は空腹時血糖値130mg/dL未満、食後 2 時間血糖値180mg/dL未満をおおよその目安
【治療強化が困難な際の目標】
低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標

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食事療法

糖尿病の治療・予防において食事療法は欠かせません。摂取カロリーや栄養素を考えなければいけません。

1.適切な摂取カロリー

1日の摂取カロリーは目標体重と活動係数で決まります。

【目標体重】

身長(m)×身長(m)×目標BMI(22~25)
※BMI(Body Mass Index):体重と身長から算出される痩せや肥満度を表す体格指数

例:身長が170㎝の人は、1.7×1.7×22=63.58
【活動係数】
軽い身体活動(25~30):大部分が座位の静的活動

普通の身体活動(30~35):座位中心だが通勤・家事、軽い運動

重い身体活動(35~):力仕事、活発な運動習慣がある

例:身長が170㎝の人で普通の身体活動の人の場合、1日の摂取エネルギーの目安は1.7×1.7×22×30=1907kcalとなります。

2.必要な栄養素の摂取

身体に必要な栄養素として、炭水化物、 たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維があります。栄養素の働きや含まれる食材や摂取する量を知っておくと、栄養成分表示がより深く理解できるので食事療法に役立ちます。

各栄養素の重量は、食品や料理の重さと同じではありません。例えば、炊いたご飯200g には、炭水化物が約85g 含まれており、生の鶏もも肉100gには、たんぱく質が約17g含まれています。

1日3回の食事で、主食・主菜・副菜をきちんと揃えると、栄養素がバランスよく摂取しやすくなります。

できるだけ多くの食品(1日30品目)の摂取を心がけると、栄養素の過不足を防ぐことにつながります。

【大人の栄養学】糖質・タンパク質・脂質・ミネラル・ビタミンについて

3.食習慣

〇規則正しい時間に食べる

食事の間隔を長く開け過ぎると、次の食事の後に血糖値が上がりやすくなります。食事は抜かずに、3食を規則正しい時間に食べるようにすることが大切です。。夕食の時間も遅くなり過ぎないように気を付ける必要があります。

〇3食のエネルギー量は同じくらいに

朝食や昼食を軽めにすませて、夕食に多くの量を食べるような「まとめ食い」は、血糖値の急上昇の原因になります。3食の量はできるだけ均等に心がけることが大切です。

〇毎日の間食を習慣にしない

必要以上に間食を摂ると、血糖値の高い状態が続きやすくなります。空腹時に間食すると、食べ過ぎの原因になるので注意して下さい。

運動療法

運動をすると、血液中のブドウ糖が筋肉に取り込まれやすくなり、血糖値が下がります。

運動を一定期間継続することによって 、インスリンの働きが改善され、筋肉へのブドウ糖取り込み能力が上がります。

【注意点】

・薬物療法中は食前の運動は控えましょう
・痛みがある時は速やかに中止し、理学療法士、医師などに相談しましょう

有酸素運動

1.ウォーキング

手を振りながら少し早歩き程度のペースで行ってみましょう。時間は20~30分程度を目安に行ってみて下さい。

2.踏み台昇降

10~20cm程度の踏み台を用いて、前方に昇り後方に降りる運動を繰り返します。昇降する足の順番を変えたり、前後だけでなく左右に昇降するのもいいと思われます。

3.腕の筋トレ

椅子に座って500mlのペットボトルに水を入れて両手に持ち、前後に交互にふる運動を行うと腕の有酸素運動になります。

水の量を増減することで負荷を調節できます。

筋トレ

筋トレをする時は必ず息を止めず、呼吸をしながら行いましょう。特に糖尿病患者では息を止めながら全力で行うと血圧が上がり、眼の血管などが破れて出血する可能性があります。

10回1セットから始め、可能であれば3~4セットを目安に行いましょう。

1.膝の曲げ伸ばし

椅子に座って、片方の膝をゆっくりとまっすぐに伸ばします。伸ばしきったところで3秒間止 め 、ゆ っくりと 下
ろします。余裕があれば重錘バンド(1kg程度)を足首に巻くとよいです。

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2.スクワット

立った姿勢から、正面を見ながらお尻を後ろにつきだすように膝を曲げます。

※後ろに倒れそうなときは前につかまるものを準備しましょう。

3.踵上げ

膝をのばしたまま 、かかとを上げて背伸びをします。

※後ろや前に倒れそうなときは前につかまるものを準備しましょう。

日常生活

買い物を自転車や徒歩に変える、バスや電車を一駅前で降りて歩くなど歩く機会・距離を増やすことで自然と活動量が増えます。

エレベーターやエスカレーターは楽ですが、階段を使うように心がけることで活動量が増えます。

万歩計やアプリなどを使用し計測・記録をつけることはモチベーションの維持に繋がります。

指・手首に装着することで活動量を測定したり、アプリと連動することで日々の運動が楽しくなります。

私が使用している計測器とアプリ

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アプリ:Garmin Connect

Garminの腕時計と連動したアプリです。

1日から1週間・1ヶ月・1年単位毎に運動量や時間などがアプリに自動的記録されます。

また、同年代との比較やチャレンジという様々な目標がありますのでモチベーションの維持に繋がります。

参考・引用元

健康食スタートブック ‒生活の質向上をめざして;一般社団法人 日本糖尿病学会 2024/3/15

理学療法ハンドブック~糖尿病~