【理学療法士が解説】腰痛に効く運動と姿勢の問題!

日々の腰痛にお悩みの方も多いのではないでしょうか?私も中学生から度々、腰痛に悩まされていました。しかし、理学療法士として勤務し、身体について詳しくなったことで腰痛に悩まされることも無くなりました。

この記事では病院などに通っているけど、腰痛が治らない・日々腰痛に悩まされている方を対象に理学療法士の私が、腰痛への対処法と効果的な運動を紹介します。

この記事の内容を実践し、腰痛の悩みから多くの方が解放されればと思います。

理学療法士:身体のスペシャリスト

理学療法士とは、病院や施設・在宅・クリニックなどでリハビリを行う仕事です。理学療法士になるためには、専門学校や大学に通い、国家試験に合格する必要があり、最低三年間かかります。そのため、身体に関して日々研鑽を積んできたプロであるということです。

まずは整形外科で一度診てもらいましょう

レントゲンやCT・MRI画像などで骨や骨格の異常・組織損傷などがないことを確認してもらいましょう。

骨や骨格の異常・組織損傷がある中の対処や運動は悪化の原因になりますので、まずはこういった以上がないことを確認する必要があります。

腰痛治療に運動が必要な理由と効果のある運動

腰痛が生じていても、2日以上の安静は良くないとされています。安静にし過ぎると筋力低下や神経系の変化により、より痛みを感じやすくなります。そのため、根本的な腰痛改善のためにはストレッチ・筋トレなどの運動は欠かせません。

また、活動量と腰痛に関して調べた研究では、運動時間が週に1時間未満の人、週に1~2.5時間の人、週に2.5時間以上の人を比べると週に1~2.5時間運動している人腰痛の割り合いが少ないという報告しています。運動不足も過度な運動も腰痛に繋がる可能性があるということです。

腰痛改善の為には適度な運動が欠かせない

腰痛治療効果のある運動(筋トレ)

腰痛を持つ平均年齢40歳代の男女90人を対象に【1.サイドブリッジ】【2.四つ這い+片足上げ】【3.片足上げブリッジ】の筋トレを12~15回を1日2回行ってもらったところ、筋トレをした人は約2週間で腰痛が軽減してきたという報告があります。

平均年齢40歳代を対象としていますが、40歳代ではないから効果が期待出来ないということではないので、出来る方はぜひ行ってみて下さい。

難易度を落とした運動

サイドブリッジ・片足上げブリッジは比較的、1セット12~15回をこなすことが難しい人は難易度を落とした方法として

サイドブリッジは膝を床につけるブリッジは両手を床につけるという方法を試してみて下さい

腰痛治療効果のある運動(筋トレ)

この研究では、腰痛がある人に【マシンなどを使って腹筋などを鍛えた筋トレ】【ドローインなどでお腹周り・骨盤周りの筋肉を鍛えた筋トレ】では腰痛の改善に違いがなかったとされています。

マシンなどを使った筋トレは苦手とする方がいらっしゃると思いますので、ドローインなどの運動は負荷の少ない筋トレなので、後者を紹介します。

ドローイン

ドローイン
方法:息を吐きながら、お腹を凹ませます。
回数:10秒×10回 2~3セット

骨盤底筋群の筋トレ

骨盤底筋群の筋トレ
方法:おしっこを我慢するように力を込めます
回数:10秒×10回 1日2セット

お腹を凹ませながらヒップリフト
方法:ヒップリフトの姿勢でお腹を凹ませます。
回数:10秒×10回
バードドッグ
方法:片方の手と対側の足を水平に上げた状態を維持します。
回数:10~30秒×3~5

ドローイン・骨盤底筋群の筋トレから始め、慣れてきたらヒップリフト➡バードドッグという順に進めていって下さい。いきなり、難易度の高いバードドックなどから始めると筋力の土台が出来ていないため腰の筋肉に負担がかかり腰痛が悪化する可能性があります。また、プランクなども腰痛持ちの方は腰に負担がかかる可能性があるので運動に慣れてから行うことをお勧めします。

腰痛の対処

腰痛の根本的な治療には紹介したいような運動が必要ですが、「腰が痛くて運動どころではない」という方に向けて腰痛の対処方法を紹介します。腰痛が強い方は紹介する方法などで、腰痛を軽減させてから運動を行ってみて下さい。

コルセットの装着

腰の筋肉の負担を和らげる対処方法としてコルセットの装着があります。コルセットを装着することで腹圧が増し、姿勢を保持することが楽になります。しかし、腰が痛くない時もコルセットを装着し続けると、姿勢を保持するための筋肉が弱くなってしまいますので頼り過ぎることはよくありません。

血行を良くする

腰の筋肉に負担がかかり血行が悪くなることで腰痛が生じますので、血行をよくすると腰痛緩和に繋がります。

血行をよくするものとして、1.マッサージ 2.お風呂に浸かる 3.温湿布やカイロを貼る、などが挙げられます。

湿布を貼る・鎮痛剤を飲む

痛みを感じにくくする方法として、湿布を貼ったり、鎮痛剤を飲んだりする方法があります。

しかし、痛みというものは身体の危険信号なので鎮痛剤を飲むということは、その信号が感じにくくなるということです。

腰痛の根本的な治療は運動ですが、痛みによって動けない・動きたくないという人では痛みを緩和してから運動する目的で活用してもよいと思われます。

腰のストレッチ

腰には腰方形筋という筋肉があります。姿勢不良によりこの腰方形筋という筋肉が酸欠を起こし、腰痛に繋がっている方が多くいらっしゃいます。腰方形筋に対する軽めの運動やストレッチを行うことで血行が回復しますので軽めの運動・ストレッチを紹介します。

1.背中を丸めて座った状態から、背中を伸ばしながら上半身を起こします。

2.背中を伸ばして座った状態から、背中を丸めます。

1・2を繰り返すことで腰方形筋が伸び縮みすることで、血行が良くなります。血行が良くなることで腰痛軽減に繋がることが多いのでお勧めの運動です。
横になった状態から骨盤と上半身をねじる運動をすることで腰方形筋のストレッチになります。
1.上半身を右側に倒したら、骨盤は左側に倒します。
2.1と反対に上半身を左側に倒したら、骨盤は右側に倒します。
背中~腰の筋肉全般を伸ばすストレッチです。
両足を抱えて膝と胸を近付けるイメージで身体を曲げた状態を10秒~30秒ほど維持します。

腰痛の原因はほとんどが姿勢不良や筋力低下など

日本人の2800万人(約4人に1人)が腰痛に悩まされています。

腰痛の約1~2割は椎間板ヘルニア・圧迫骨折・脊柱管狭窄症などの診断名がつきますが、約8~9割非特異的腰痛といい、明確な診断名がつけられないものです。

つまり、日々の姿勢不良筋力・柔軟性低下などにより腰の筋肉に過度な負担がかかったことによる腰痛がほとんどだということです。

筋肉は過度な活動が続くと筋肉が酸素不足になります。酸素不足になった筋肉は損傷し、痛みの出る物質が生成されることで痛くなります。

腰痛を引き起こす悪い姿勢とは?

反り腰

反り腰とは骨盤が過度に前傾し、腰が反り返っている状態を言います。反り腰は腰痛だけでなく、肩こり、股関節の痛みなど様々な不調を引き起こす原因となります。また、お腹が前に突き出たような見た目になってしまいます。

反り腰の要因として、肥満・ハイヒールの多様などが挙げられます。

肥満

肥満だと腹部の重みで骨盤が前に倒れこみ、反り腰の姿勢になってしまいます。食事・運動で体重をコントールする必要があります。

ハイヒールの多用

ハイヒールのような踵を上げた状態は骨盤を前に倒す姿勢につながり、反り腰になってしまいます。使用時間が長い・使用頻度が多いと腰痛につながるため注意が必要です。

猫背

背骨が自然なS字のカーブを保つことが出来ずに、胸椎(胸の背骨)が後ろの大きく丸まっている状態を言います。胸椎が後ろに大きく丸まっているため、腰椎(腰の背骨)も後ろに引っ張られてしまいます。

猫背の原因として、ソファに長時間座る、長時間のデスクワーク、足を組んで座る、過度なストレスなどが挙げられます。

ソファやベッドに長時間座る

ソファやベッドのような柔らかい場所に座り込むと、全体的に丸まった姿勢となり骨盤が後ろに倒れこんでしまいます。長時間ソファに座ることは全体的に丸くなった姿勢を長時間続けることになるため、腰痛を引き起こす可能性があります。

長時間のデスクワーク

デスクワークは身体全体が丸まった姿勢となるため、長時間のデスクワークは猫背に繋がります。

足を組んで座る

足を組んで座ると骨盤が後ろに倒れこんでしまい、背中が丸まってしまいます。無意識に行っている人も多いので腰痛持ちの方は足を組んで座ることは避けましょう。

過度なストレス

過度なストレスはうつむいた姿勢を誘発し、姿勢を悪くすることに繋がってしまいます。また、過度にストレスを受けると神経系が痛みを感じやすく変化してしまうため、腰痛が悪化してしまう可能性があります。

反り腰と猫背の見分け方

反り腰:壁にかかと・お尻・肩甲骨・後頭部をつけて立ち、腰と壁の間に手のひら一つ分以上の隙間があれば反り腰の可能性

猫背:壁にかかと・お尻・肩甲骨・後頭部をつけて立ち、無理なく自然な姿勢になった時に、後頭部が離れると猫背の可能性があります。

腰痛の治療:反り腰に効果的なストレッチと筋トレ

ストレッチ

反り腰は腸腰筋・大腿直筋の柔軟性低下が挙げられます。

腸腰筋のストレッチ
方法:片足を前に出し、出した足の膝を曲げます。膝を曲げる際に身体が前に倒れないように、身体を反らすようなイメージで姿勢を維持します。
時間:30秒×3~5
大腿直筋ストレッチ
方法:立った姿勢で片方の足を持ち上げ、かかととお尻を付けます。この時、身体が前に倒れないように気を付けましょう。バランスがとりづらい場合は、片方の手は何か支持物を持ちましょう。
時間:30秒×3~5
大腿直筋ストレッチ
方法:長座位から片方の膝を曲げ踵とお尻を付けます。余裕があれば、上半身を後ろに倒していくと曲げた方の足の前側が伸びていく感じがします。
時間:30秒×3~5

筋トレ

反り腰は腹筋・殿筋の筋力低下が挙げられます。

クランチ:腹直筋の上部
方法:おへそを覗くように頭をあげる
回数:10~20回×3~5
注意点:息を止めないこと、腰に痛みがあればやめておきましょう
レッグレイズ:腹直筋の下部
方法:膝を伸ばして足を挙げます。膝を伸ばして行うのが難しい場合は膝を曲げて行いましょう。
回数:10~20回×3~5
注意点:腰と床が離れないように注意しましょう。腰が浮いてしまう場合は、膝を曲げて行うなど負荷を調整して行います。
ヒップリフト:殿筋
方法:仰向けで膝を立てた状態から、お尻を上げます。
回数:10~20回×3~5
注意点:足の位置が遠いと太もも裏に効きますので、お尻を上げた時に膝が90°以上曲がる位置に足を置きましょう。

腰痛の治療:猫背に効果的なストレッチと筋トレ

ストレッチ

猫背は腹筋群・ハムストリングス(太もも裏の筋肉)・大胸筋の柔軟性低下が挙げられます

腹直筋のストレッチ
方法:うつ伏せの姿勢から、しゃちほこのように背中を反らします。
時間:30秒×3~5
ハムストリングスのストレッチ
方法:足を広げて座り、足首をつかむように上半身を倒します。
時間:30秒×3~5
ハムストリングスのストレッチ
方法:仰向けに練り、膝を伸ばしたまま足を上げます。片方の足は上がらないように床につけておきます。
時間:30秒×3~5
殿筋のストレッチ
方法:仰向けに寝た状態で片方の足を抱えて膝と胸を近付けるように意識します。
時間:30秒×3~5
大胸筋のストレッチ
方法:両肘を背中でくっつけるようなイメージで胸を張ります。
時間:30秒×3~5
大胸筋のストレッチ
方法:ストレッチポールを背中に置き、胸を張るように両腕を左右に下ろします。
時間:30秒×3~5

筋トレ

ローイング
方法:うつ伏せの姿勢から、背中を反らしながら両肘を背中で付けるイメージで引き寄せます。
回数:10~20回×3~5
注意点:腰が痛くなれば止めておきましょう。
背中全般の筋トレ
方法:水の入ったペットボトルなどを把持し、肘が背中の後ろに来るように腕を引きます。
回数:10~20回×3~5
腿上げ
方法:座った状態で腿上げをします。
回数:10~20回×3~5
注意点:背中が反らないように気を付けます。
腿上げ
方法:立った状態で腿上げをします。
回数10~20回×3~5
注意点:背中が反らないように気を付けます。

理学療法士が腰痛持ち高齢者に行っているよくリハビリ3選

理学療法士として病院で働いていると腰痛持ちの高齢者のリハビリをすることが多々あります。高齢者となると負荷の高い運動は難しいことが多いです。そんな高齢者相手に私が行っていることが多い腰痛改善のリハビリを紹介します。腰痛持ちの祖父母がいらっしゃれば参考にしてみて下さい。

腰方形筋の負担が大きく、腰が痛い高齢者が多いので上の運動を行うことが多いです。高齢者では上の運動が伝わりづらいことが多いので、背中を伸ばす運動をする時は工夫して声掛けを行います。「手を真っすぐ水平に保ったまま伸ばします」。長座体前屈のように座った状態で水平に出来るだけ真っすぐ手を伸ばすと自然と骨盤を起こしながら背中を伸ばす運動に繋がります。

高齢者の中には背骨そのものが曲がっており、固いベッドなどに横になるだけで腰が痛くなる方いらっしゃいます。そのような方は横になってドローインを行うことが難しいので座った状態で行っています。

高齢者ではサイドブリッジなどでお尻の筋肉(中殿筋・小殿筋)を鍛えることが難しい場合が多いです。そのような方には、椅子などの支えを持ちながら足を横に広げる運動を行っています。身体が左右にぶれないように気を付ける必要がありますが、比較的簡単に行うことが出来る運動なので行うことが多いです。

筋トレ時の注意点

1.痛みがある・疲労が残っている時は無理して行わないこと、無理して続けないこと

2.呼吸は止めずに行う。呼吸を止めてしまうと一時的に血圧が上昇し、めまいなどが出ることがあります。

3.いきなり高負荷で行わないこと、徐々に負荷を上げていきましょう。

4.正しい姿勢・方法で行うこと、姿勢や方法を間違ってしまうと腰痛が悪化するリスクがあります。動画などを参考にし正しい姿勢・方法で行いましょう。

参考文献・引用元

参考文献

G Santamaría, I Rodríguez,et al. Effect of Hip Muscle Strengthening Exercises on Pain and Disability in Patients with Non-Specific Low Back Pain—A Systematic Review 2023

Michael Bade PhD, et al.Effects of manual therapy and exersise targeting the hips in patients with low-back painーA randomized controlled traia

Monica Unsgaardel, et al. Motor Contorl Exercises, Sling Exercises, and General Exercises for Patients With Chronic low Back Pain A randomized Controlled Traial With 1-Year Follow-up

George A Koumantakis, et al. Trunk Muscle Stabilization Trainig Plus General Exercise Versus General Exercise Only Controlled Trail of Patients With Recurrent Low Back Pain