【大人の栄養学】糖質・タンパク質・脂質・ミネラル・ビタミンについて解説

理学療法士にとって栄養の知識はリハビリテーションの実施において非常に重要です。リハビリ効果を高めるためには、患者さんの栄養状態を把握することが必要不可欠です。栄養の知識を持っていると患者さんの不安を軽減し、治療への協力意識を高めます。

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【栄養】

ヒトは物質を外界から摂取し消化・吸収し、体内でエネルギー源として使用したり、体内の材料として用いたり、不要な物質を老廃物として排泄します。この営み全てを栄養といいます。

五大栄養素と栄養素の主な働き

  • 炭水化物
  • タンパク質
  • 脂質
  • ビタミン
  • ミネラル
  • (食物繊維)

【栄養素の働き】

エネルギーになるものは主に糖質脂質です。しかし、糖質の摂取量が不足しているとタンパク質を分解してエネルギーを得ようします。ヒトは運動時のみでなく、安静にしているだけもエネルギーを消費します。

身体をつくるものとして代表的なのがタンパク質です。筋肉や爪・皮膚など身体全体の構成に関わってきます。また、歯はミネラルが関わってきたり、細胞膜は脂質が関わってきます。

身体の調子を整えるものはビタミンミネラルが関わってきます。体温調整や代謝、神経の働きなどに関わり身体の調子を崩さないためには欠かせない栄養素です。体内で生成されるものもあれば、体内で生成されないものもあるため食物として摂取する必要があります。そのため、バランスのとれた栄養が必要になるわけです。

糖質

糖質は炭水化物の一部であり、炭水化物が消化酵素によって人が吸収出来る【糖質】と、消化できない【食物繊維】に分類されます。糖質の代表的なものとして小麦粉類いも類などが挙げられます。糖質は安静時の生命活動に加えて、運動によって消費されます。健康的な身体には運動は欠かせないので、大切な栄養素になります。

ブドウ糖が唯一のエネルギー源であり、糖質が不足すると集中力や思考力の低下、疲れやすくなるなどがみられるようになります。また、タンパク質を合成するアミノ酸のうち、11種類の非必須アミノ酸を作り出すためにも糖質は必要になります。

しかし、糖質はたくさんとればいいというものではありません。食事から摂取した糖質はエネルギー源として肝臓や筋肉にグリコーゲンとして水分と共に蓄えられますが、余った糖質は中性脂肪に変えられ、脂肪細胞として蓄積されます。(下図)

中性脂肪は肥満の原因となり、様々な疾患につながる可能性があるため注意が必要です。

炭水化物の適正量

炭水化物は総摂取エネルギーの約50~65%が妥当であると、厚生労働省が策定した【日本人の食事摂取基準(2020年版)】で定めています。

※1日の総摂取エネルギーの計算(目標体重と活動係数)

【目標体重】

身長(m)×身長(m)×目標BMI(22~25)
※BMI(Body Mass Index):体重と身長から算出される痩せや肥満度を表す体格指数

例:身長が170㎝の人は、1.7×1.7×22=63.58
【活動係数】
軽い身体活動(25~30):大部分が座位の静的活動

普通の身体活動(30~35):座位中心だが通勤・家事、軽い運動

重い身体活動(35~):力仕事、活発な運動習慣がある

例:身長が170㎝の人で普通の身体活動の人の場合、1日の摂取エネルギーの目安は1.7×1.7×22×30=1907kcal

●タンパク質

タンパク質は、人の身体を構成する成分です。食事から摂取したタンパク質がアミノ酸に分解されて、身体に吸収されると筋肉や臓器、肌、髪、爪などの材料になる他、ホルモン・代謝酵素・免疫物質などになり様々な働きをしています。

身体のタンパク質は合成と分解が繰り返されており、合成と分解のつり合いをとるには食事からタンパク質を摂取することが必要です。髪・爪が伸びるように、身体のタンパク質は新しく作られる一方で抜け落ちて失われているものもあります。また、筋肉や臓器といった目に見えないものも一部分解されて、体外へ排出されます。こういった失うものを補うためにタンパク質摂取を心がけることが大切です。

タンパク質とアミノ酸

タンパク質は約20種類のアミノ酸の総称であり、体内で生成されるアミノ酸もあれば、体内では生成されないアミノ酸もあります。体内では生成されないアミノ酸を必須アミノ酸といい、食物で摂取する必要があります。筋肉などの身体の構成に欠かせないタンパク質ですが、アミノ酸摂取のバランスが悪いと効率よく身体を構成してくれません。

イメージとして穴の開いたバケツみたいなものです。下図のアミノ酸というバケツがあり、他のアミノ酸を十分に摂取していても、例えばロイシンというアミノ酸が不足してしまっていては、ロイシンから水がもれてしまい残った分の水しか身体を構成してくれません。そのため、タンパク質の摂取は身体の構成にとって大切ですが、一つの食べ物からタンパク質を摂取しようとするとアミノ酸のバランスが悪くなり効率も悪くなります。

タンパク質の代表的なものとして、肉・魚・乳製品・大豆製品などが挙げられます。これらは身体に必要な必須アミノ酸をバランスよく含んでいることから【良質なタンパク質】と言われています。しかし、肉だけ、乳製品だけというわけではなくバランスの良い食事で複数の食べ物でタンパク質を摂取する必要があります。

●脂質

脂質は糖質・タンパク質に並ぶ3大栄養素の1つであり、体内では水分の次に多く含まれています。脂質は細胞膜を構成する、身体の機能を一定に保つ身体の免疫機能に関わる、脂肪としてエネルギーの貯蔵として蓄えるなどの役割があります。脂肪は身体に欠かせないものなので、過度に脂肪を落としたり、過度に脂肪を蓄える肥満などは身体にとってよくありません。

脂質には単純脂質(中性脂肪など)、複合脂質(リン脂質・リボタンパク質など)、誘導脂質(コレステロール、脂肪酸、ステロイドなど)があります。

コレステロール

コレステロールはホルモンや細胞膜を作るという重要な働きをしている脂質です。コレステロールの7~8割は体内で糖・脂質から合成されており、2~3割は体外から取り入れられています。コレステロールは【LDLコレステロール(悪玉コレステロール)】【HDLコレステロール(善玉コレステロール)】があります。

LDLコレステロール

肝臓で作られたコレステロールを体内の各部へ運ぶ機能があります。LDLコレステロールが増えすぎると、脳・心臓などの重要な器官に悪影響を与えるおそれがあります。

HDLコレステロール

体内の各部の細胞内・動脈内に溜まっている不要なコレステロールを肝臓に戻すは機能があります。

脂肪酸

脂肪酸は脂質の主要な構成要素の1つで、ほかの物質と結合して脂質を生み出しています。

脂肪酸の代表的なものとして【飽和脂肪酸】・【一価不飽和脂肪酸】・「【多価不飽和脂肪酸】に分けられます。

飽和脂肪酸

乳製品・肉類などの動物性脂肪やココナッツオイルなどに多く含まれます。

エネルギー源になりやすいですが、過剰摂取しやすいため、LDLコレステロールを上昇させて健康リスクを高めてしまいます。

一価不飽和脂肪酸

動物性脂肪酸やオリーブ油などの植物性油に多く含まれます。体内で合成することも可能です。

多価飽和脂肪酸

青魚・ごま油・大豆油などに多く含まれます。体内では合成できないため、食べ物から摂取する必要があります。しかし、摂り過ぎると肥満・高脂血症などを引き起こす可能性があるため注意が必要です。

脂質の適正量

脂質は総摂取エネルギーの約20~30%が妥当であると、厚生労働省が策定した【日本人の食事摂取基準(2020年版)】で定めています。

また飽和脂肪酸の摂取量は18歳以上の男女で総摂取エネルギーの7%相当以下にと言われています。

しかし、20歳以上の男女で総摂取エネルギーの30%以上を脂質からとっていると言われています。また、飽和脂肪酸は8.4%と言われており、脂質の摂り過ぎには注意が必要です。

●ミネラル

ミネラルとは、身体を構成する元素の一部です。代表的なミネラルとして、カルシウム・カリウム・ナトリウム・鉄などがあります。ミネラルは身体の調整・身体の構成材料・代謝などに関わる酵素の構成成分として様々な働きをしています。

身体に必要なミネラルの量は微量ですが、体内で合成できないため食べ物から摂取する必要があります。

身体に必須のミネラル

身体に必須のミネラルは13種類あり、多量ミネラルと微量ミネラルに分けられます。

多量ミネラル:ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン(5種類)

ナトリウム

体内の水分量・ミネラルバランスを調整する役割があります。また、胆汁・膵液・腸液などの材料となります。多くの食材に含まれているため、不足することは考えられませんが、和食はナトリウムを過剰摂取しやすい傾向があるため注意が必要です。

ミネトリウムを過剰に摂取すると浸透圧を保つために水分を体内に溜め込みます。その結果、血圧上昇の原因となってしまいます。

カリウム

カリウムは体内の水分量を調整する働きに加えて、神経の伝達筋肉の収縮の重要な役割を担っています。また、心臓の収縮にも関与しており、心臓の正常な機能を維持するためにも重要です。多くの食材に含まれているため不足することは考えられにくいですが、不足すると筋肉の痙攣・筋力低下・神経障害・不整脈などが生じます。

腎機能が低下している場合はカリウムの摂取量に注意が必要だと言われています。

カルシウム

骨や歯の構成成分血液凝固筋収縮などに関与しています。日本人の食習慣では不足しやすいため、牛乳、小魚、わかめ、豆腐などの大豆製品を積極的にとる必要があります。

カルシウムの不足骨・歯の形成を阻害し、骨粗鬆症のリスクを高めます。また、筋力低下・神経障害などが生じます。

マグネシウム

骨や歯の構成成分であり、筋肉や神経機能の維持酵素の働きを助ける役割があります。。マグネシウムが不足することはですが不足すると、吐き気、嘔吐、眠気、筋肉の痙攣などが生じます。

リン

骨・歯の構成成分DNAの構成エネルギー代謝・貯蔵に関わっています。リンは様々な食材に含まれているため、不足することは稀です。リンの過剰摂取血管の石灰化、骨粗鬆症のリスクを高める可能性があります。

微量ミネラル:鉄・亜鉛・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデン

赤血球に含まれるヘモグロビンという酸素を運ぶ組織の構成成分です。鉄が不足すると酸素の運搬能力が低下するため貧血になります。鉄は動物性食品から摂取できるヘム鉄、植物性食品から摂取できる非ヘム鉄があり、ヘム鉄の方が吸収率が良いと言われています。

※非ヘム鉄はビタミンCと共に摂取すると吸収率がアップするといわれています。

亜鉛

酵素の構成成分であり、タンパク質やDNAの合成免疫機能などに関わっています。亜鉛の不足味覚障害・皮膚炎・成長障害・免疫機能の低下などが生じるといわれています。多くの食品に含まれているため、偏った食事をしていなければ不足しにくいと言われています。

酵素の構成成分であり、神経伝達物質の生成鉄代謝などに関わっています。一般的な食事では不足・過多になることはないと言われています。

マンガン

酵素の活性化させ代謝のサポート骨の形成糖代謝に関与し血糖値の安定化生殖機能など様々な身体の作用に関わっています。不足しにくいですが、不足すると骨の異常成長障害生殖機能の低下などが起こる可能性があります。

ヨウ素

甲状腺ホルモンの構成成分であり、成長や代謝に関わっています。海藻類に多く含まれており、海藻類を食べないと不足する傾向があるため海藻類を適度に摂り入れることが大切です。

セレン

抗酸化作用があり細胞のダメージを防いだり免疫細胞の活性化や抗体産生による免疫機能向上甲状腺ホルモンの代謝に関わっています。多くの食材に含まれているため不足しにくいミネラルです。

クロム

糖代謝に関与し血糖値の安定化脂質代謝を改善しコレステロール値を下げる効果があります。

さつまいも・ほうれん草・大豆・さんまなどに多く含まれています。

モリブデン

糖代謝に関与し血糖値の安定化脂質代謝の改善鉄分の働きを活性化し造血促進作用もあります。

モリブデンは多くの食材に含まれていますので不足しにくいミネラルですが、不足すると貧血疲労夜盲症などが生じます。

●ビタミン

ビタミンは水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあります。水溶性ビタミンは体内に貯蔵することが難しいので、不足しないように常に摂取を心がけましょう。ビタミンの摂取不足で貧血・骨粗しょう症・口内炎・神経症状・夜盲症などが出てきますので気を付けましょう。

脂溶性ビタミン

【脂溶性ビタミン:ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK(4種類)

脂溶性ビタミンを過剰に摂取すると体内に蓄積されて過剰摂取を引き起こす可能性があるため、過剰摂取に注意が必要です。

ビタミンA

作用:皮膚や粘膜を健やかに保ち視覚に関わる色素タンパク質の生成身体の成長に関わります

豊富な食材:豚レバー、鶏レバー、ウナギなどの動物性タンパク質や人参、ほうれん草に多く含まれる

ビタミンD

作用:カルシウムと関わりを持ち、身体作りをサポートします。食品以外に、日光に当たることで体内で合成されます。

豊富な食材:鮭、サンマなどの魚類、キノコ類、卵など

ビタミンE

作用:細胞膜に存在し、健康維持を助けます。様々な食品に含まれるので極端に偏った食事でない限り不足することはほとんどないと言われています

豊富な食材:西洋カボチャ、ウナギ、アーモンドなど

ビタミンK

作用:血液凝固骨の健康維持に関わります。食事摂取の他に、腸内細菌によって合成されます。

豊富な食材:納豆、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、鶏肉など

水溶性ビタミン

【水溶性ビタミン:ビタミンC、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン(9種類)】

水に溶けやすい性質を持ち、過剰に摂取した場合は尿として排出されるが、摂取量の不足時は欠乏性の症状を引き起こす可能性があります。

ビタミンC

作用:皮膚や粘膜の健康維持に関わり、植物性食品からの鉄の吸収促進身体の中の酸化還元反応に広く関わる

豊富な食材:野菜や果物に多く含まれる(加熱調理によって失われやすいので生のまま食べると効率よく摂取出来ます)

ビタミンB1

作用:糖質代謝の酵素として働き、糖質をエネルギーへと生成する働きに深く関わってきます。ビタミンB1の摂取不足や糖質の過剰摂取はビタミンB1の欠乏性症状が出る可能性があります

豊富な食材:豚肉、うなぎ、紅鮭、玄米、発芽玄米など

ビタミンB2

作用:糖質・脂質・タンパク質のエネルギー代謝脂質代謝の補酵素として働きます。また、皮膚や粘膜の健康維持に関わります。

豊富な食材:レバー、うなぎ、ブリ、納豆、牛乳など

ビタミンB6

体内でタンパク質・アミノ酸代謝に深く関わるほか、赤血球のヘモグロビン合成皮膚や粘膜を健やかに保つ働きをします。

豊富な食材:豚ひれ肉、バナナ、玄米、さつまいもなど

ビタミンB12

作用:食品中のタンパク質と結びついており、アミノ酸や脂肪酸の代謝の補酵素として働きます。

豊富な食材:魚介類、レバーなどの動物性食品

ナイアシン

作用:酸化還元反応に関わり、皮膚や粘膜の健康をサポートします。また、アミノ酸の1つであるトリプトファンからも生成されます。

豊富な食材:玄米、鶏むね肉、かつお、まぐろなど

パントテン酸

作用:補酵素の材料として、エネルギー代謝に関わっており、様々な食材に含まれています。

豊富な食材:レバー、鶏むね肉、納豆、玄米、アボカドなど

葉酸

作用:DNAやRNAの合成アミノ酸の代謝などの関わっています。

豊富な食材:レバー、枝豆、ほうれん草、ブロッコリーなど

ビオチン

作用:糖新生による血糖値の安定化脂肪酸の合成に関わっています。

豊富な食材:レバー、鶏卵、アーモンド、ブロッコリー、納豆など

バランスの良い食事を心がけよう

食べ物から得られる栄養素には、身体を健康に保つための重要な働きがあります。単純ではなく、それぞれの栄養素が複雑に相互作用することで身体の健康が維持されているため、栄養の偏りは栄養素が十分に効果を発揮することが出来ず生活習慣病に繋がる可能性があります。

食事のバランスの目安として、糖質5割・タンパク質3割・脂質2割が良いとよく言われています。これをPFCバランスと言います。普段の買い物から、栄養成分やエネルギー表をみる習慣をつけるといいかもしれません。