【運動が身体にとって良い】というのは周知の事実です。しかし、実際にどれくらい運動・活動すれば良いのか、多くの方は分からないと思います。
ここでは成人・高齢者だけでなく、ガンや糖尿病などの慢性疾患、脳卒中や脊髄損傷・統合失調症などの障害のある人、適切な運動量はそれぞれです。
この記事では多くの方に当てはまるように適切な運動量をお伝えします。
はじめに
WHO(World Health Organization:世界保健機関)が、各年代や慢性疾患を有する人・障害を有する人の適切な運動量を根拠を持って公開しています。
つまり世界規模で健康を増進するために適切な運動量を示しており、非常に有益な情報です。
WHOが示している適切な運動量をお伝えする前に、重要なメッセージをお伝えします。

定期的な身体活動は、心臓病・2型糖尿病・ガンといった疾病の予防と管理に貢献することが分かっています。また、身体活動は、うつや不安の症状を軽減し精神を安定させる効果、思考力・学習力・総合的な幸福感を高める効果があります。

健康と幸福のために、少なくとも成人では週に150~300分の中強度~高強度の有酸素性の身体活動、子どもや青少年では 1日平均60分の中強度の有酸素性の身体活動が推奨されています。

仕事やスポーツ・余暇活動・移動(ウォーキング、サイクリング)だけでなく、日常生活活動や家事も身体活動に含まれます。

高齢者(65歳以上)では、転倒予防・健康増進のためには、筋力強化だけでなく、バランス練習や身体の各部位を思い通りに動かす能力(協調練習)を重視した身体活動を取り入れるべきであると言われています。

座りすぎは心臓病・ガン・2型糖尿病のリスクを高めてしまいます。座る時間を極力少なくし、身体活動を行うことは健康に良いとされています。
適切な運動量(有酸素運動と筋トレ)
健康効果を得るためには1週間を通して、中等度の有酸素運動を少なくとも150~300分、高強度の有酸素運動を少なくとも75~150分行うことが推奨されています。
中等度の有酸素運動:150~300分
中等度の有酸素運動とは、最大酸素摂取量(VO2Max)が約50%程度の運動と言われています。体力テストを行うと正確に計算できますが、実際に体力テストを行うことは難しいので以下の方法が目安となります。
心拍数で計算:[220ー年齢ー安静時心拍数(安静にしている時の1分間の心拍数)]×0.4~0.6+安静心拍数
※片方の手首の外側に反対側の人差し指・中指・薬指の3本の指を当てて脈拍を探り、1分間の拍動を数えます。
息切れの度合い:少し息が切れるが、会話が出来る程度
自覚強度:「ややきつい」と感じる程度
【中等度の有酸素運動:例】

サイクリング・ウォーキング・水中運動・太極拳・ボーリング・フリスピー・ゴルフなど
高強度の有酸素運動:75~150分
高強度の有酸素運動とは、最大酸素摂取量(VO2Max)の約50%を超える運動を言います。高強度の運動を行えば、筋肉には乳酸が溜まり疲労が生じるため、連続した長時間の運動は難しい強度です。
心拍数で計算:[220ー年齢ー安静時心拍数(安静にしている時の1分間の心拍数)]×0.6~1.0+安静心拍数
息切れの度合い:肩から息をして会話が難しい
自覚強度:「きつい」「かなりきつい」と感じる程度
【高強度の有酸素運動:例】

ジョギング・ランニング・少し速いサイクリング・水泳・サッカー・テニス・きつい筋トレなど
成人では健康増進のために、週に2日以上、全ての主要筋群を使用して実施する中強度以上の筋力向上活動を行うことが推奨されています。
【自宅で出来る筋トレ:例】
〇上半身
〇体幹
〇下半身
成人(18~64歳)の適切な運動量(有酸素運動・筋トレ)による効果

【補足】
1.何もしないよりは少しでも身体活動・運動をした方が良いとされています。
2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。
3.身体活動・運動は少しずつでも良いので行っていき、時間をかけて徐々に頻度・強度・持続時間を増やしていくのが望ましいとされています。
高齢者(65歳以上)の適切な運動量(有酸素運動・筋トレ)による効果


身体機能の向上と転倒予防のために、機能的なバランス練習と筋トレを重視した多様な要素を含む運動を週3日以上、中強度以上の強度で行うべきであるとされています。
【補足】
1.何もしないよりは少しでも身体活動・運動をした方が良いとされています。
2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。
3.身体活動・運動は少しずつでも良いので行っていき、時間をかけて徐々に頻度・強度・持続時間を増やしていくのが望ましいとされています。(いきなりの激しい運動はケガをする可能性があります)
4.身体機能・体力のレベルに応じて身体活動の強さのレベルを調整して下さい。(最初から無理に高強度の運動を長時間行う必要はありません)
慢性疾患(ガン・糖尿病など)を有する人の適切な運動量による効果

また、慢性疾患を有していても高齢者においては、身体機能の向上と転倒予防のために、機能的なバランス練習と筋トレを重視した多様な要素を含む運動を週3日以上、中強度以上の強度で行うべきであるとされています。
【補足】
1.推奨量を満たすことが難しい人は、個々の能力に合わせた身体活動・運動を行って下さい。
2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。
3.これらの慢性疾患のある成人は、医者や理学療法士といった医療従事者・専門家に相談して、個々の能力・目的、合併症や制限、服薬している薬などから身体活動・運動の種類と量についてアドバイスを受けてから行うようにして下さい。(※糖尿病末期の人では合併症により高強度の運動が禁忌となる場合などがあります)
4.身体活動・運動の禁忌がない人は、ウォーキング(速歩き)や日常生活の範囲を超えないような軽度~中強度の身体活動・運動を行う場合は医学的な許可は一般的に不要であるとされています。※不安であるならば医療機関を受診しアドバイスを受けるのも選択肢の一つです
障害を有する人の適切な運動量による効果

【補足】
1.何もしないよりは少しでも身体活動・運動をした方が良いとされています。
2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。
3.身体活動・運動は少しずつでも良いので行っていき、時間をかけて徐々に頻度・強度・持続時間を増やしていくのが望ましいとされています。(いきなりの激しい運動はケガをする可能性があります)
4.個々の健康状態・身体機能・日常生活の活動量に応じて、適切に身体活動・運動を行う場合は大きなリスクはなく、健康効果がリスクを上回るとされています。
5.個人に適した身体活動の種類と量を決定するためには、医療専門家やその他の身体活動および障害の専門家に相談する必要があるかもしれない。
まとめ
成人(18~64歳)・高齢者(65歳以上)、慢性疾患を有する人・障害を有する人の推奨されている運動量は、1週間で中等度の運動で150~300分、高強度の運動で75~150分です。適切な運動量は様々な健康効果や生活の質が改善することが期待出来ます。
しかし、運動習慣のない人がいきなり推奨されている適切な運動量をこなそうとしても難しいと思われるため、簡単な運動から始め徐々に時間・強度を増やすようにして下さい。
慢性疾患の症状・合併症や障害により長時間・高強度の運動が難しい人においても、運動しないよりは運動をした方が健康効果・疾病の進行予防・身体機能の改善・生活の質の改善が期待出来ますので出来ることを行うようにして下さい。