【世界規模!】健康の為の成人・高齢者の適切な運動量はどれくらい?

【運動が身体にとって良い】というのは周知の事実です。しかし、実際にどれくらい運動・活動すれば良いのか、多くの方は分からないと思います。

ここでは成人・高齢者だけでなく、ガンや糖尿病などの慢性疾患、脳卒中や脊髄損傷・統合失調症などの障害のある人、適切な運動量はそれぞれです。

この記事では多くの方に当てはまるように適切な運動量をお伝えします。

はじめに

WHO(World Health Organization:世界保健機関)が、各年代や慢性疾患を有する人・障害を有する人の適切な運動量を根拠を持って公開しています。

WHO(世界保健機関)とは

WHO(世界保健機関)はWHOは194の国と地域が加盟しており、1948年4月7日に全ての人々の健康を増進し保護するため互いに他の国々と協力する目的で設立されました。

WHOが定める健康の定義として、【病気の有無ではなく、肉体的、精神的、社会的に満たされた状態にあることを掲げ、 人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることが基本的人権である】と謳っています。

つまり世界規模で健康を増進するために適切な運動量を示しており、非常に有益な情報です。

WHOが示している適切な運動量をお伝えする前に、重要なメッセージをお伝えします。

1.身体活動は心身の健康に寄与します。

定期的な身体活動は、心臓病・2型糖尿病・ガンといった疾病の予防と管理に貢献することが分かっています。また、身体活動は、うつや不安の症状を軽減し精神を安定させる効果、思考力・学習力・総合的な幸福感を高める効果があります。

2.何もしないより少しでも活動した方が良いです。 また、活動量はより多い方が良いです。

健康と幸福のために、少なくとも成人では週に150~300分の中強度~高強度の有酸素性の身体活動、子どもや青少年では 1日平均60分の中強度の有酸素性の身体活動が推奨されています。

3.すべての身体活動に意味があります。

仕事やスポーツ・余暇活動・移動(ウォーキング、サイクリング)だけでなく、日常生活活動や家事も身体活動に含まれます。

4.筋トレは全ての人の健康に役に立ちます。

高齢者(65歳以上)では、転倒予防・健康増進のためには、筋力強化だけでなく、バランス練習身体の各部位を思い通りに動かす能力(協調練習)を重視した身体活動を取り入れるべきであると言われています。

5.座りすぎは不健康の元になってしまいます。

座りすぎは心臓病・ガン・2型糖尿病のリスクを高めてしまいます。座る時間を極力少なくし、身体活動を行うことは健康に良いとされています。

適切な運動量(有酸素運動と筋トレ)

有酸素運動

健康効果を得るためには1週間を通して、中等度の有酸素運動を少なくとも150~300分、高強度の有酸素運動を少なくとも75~150分行うことが推奨されています。

中等度の有酸素運動:150~300分

中等度の有酸素運動とは、最大酸素摂取量(VO2Max)が約50%程度の運動と言われています。体力テストを行うと正確に計算できますが、実際に体力テストを行うことは難しいので以下の方法が目安となります。

心拍数で計算:[220ー年齢ー安静時心拍数(安静にしている時の1分間の心拍数)]×0.4~0.6+安静心拍数

※片方の手首の外側に反対側の人差し指・中指・薬指の3本の指を当てて脈拍を探り、1分間の拍動を数えます。

息切れの度合い:少し息が切れるが、会話が出来る程度

自覚強度:「ややきつい」と感じる程度

【中等度の有酸素運動:例】

サイクリング・ウォーキング・水中運動・太極拳・ボーリング・フリスピー・ゴルフなど

【さらなる健康のために】

1週間を通して、中強度の有酸素運動を300分以上、または150分以上の高強度の有酸素運動を行うことで、さらに健康効果を得られる可能性があると言われています。

高強度の有酸素運動:75~150分

高強度の有酸素運動とは、最大酸素摂取量(VO2Max)の約50%を超える運動を言います。高強度の運動を行えば、筋肉には乳酸が溜まり疲労が生じるため、連続した長時間の運動は難しい強度です。

心拍数で計算:[220ー年齢ー安静時心拍数(安静にしている時の1分間の心拍数)]×0.6~1.0+安静心拍数

息切れの度合い:肩から息をして会話が難しい

自覚強度:「きつい」「かなりきつい」と感じる程度

【高強度の有酸素運動:例】

ジョギング・ランニング・少し速いサイクリング・水泳・サッカー・テニス・きつい筋トレなど

筋トレ

成人では健康増進のために、週に2日以上、全ての主要筋群を使用して実施する中強度以上の筋力向上活動を行うことが推奨されています。

【自宅で出来る筋トレ:例】

〇上半身

フロントプレス
方法:1.ダンベルまたは水の入ったペットボトルを両手に持ちます。
   2.ダンベル・ペットボトルを上に上げます。(肘は伸ばしきらない)
   3.ダンベル・ペットボトルを始めの姿勢に下ろします。
回数:10~20回×2~3
注意点:上半身を反らすと腰痛の原因になる可能性があります。(腹筋・背筋を意識して、上半身を真っすぐ維持します)
    手幅が狭いと上腕二頭筋や僧帽筋にも負荷が分散します。
ダンベルカール
方法:1.ダンベルや水を入れたペットボトルを、肘を曲げゆっくりと持ち上げます。
   2.持ち上げたらゆっくりとダンベル・ペットボトルを下ろしていきます。
回数:10~20回×2~3
注意点:肘が前後に揺れないように注意して下さい。
    肘を伸ばしきるとケガに繋がる可能性があります。
    反動をつけると筋肉に負荷がからないのでゆっくり行うことを意識します。(瞬発力・神経を鍛えたい場合は反動をつけるのがおススメです)

リバースプッシュアップ
方法:1.足をついてベンチや椅子などを胸を張った状態で把持します。
   2.肘を曲げて上体を下ろします。
   3.肘を伸ばして上体を上げます。(肘は伸ばしきらない)
回数:10~20回×2~3セット
注意点:肘を伸ばしきるとけがをする可能性があります。

〇体幹

ラットプルダウン
〇スクワット
方法:1.タオルなどを持ち、肩幅に広げた両手を上げます。
   2.力強く両肘をわき腹にくっつけるように意識しれ両腕を下げます。
回数:10~20回×2~3
注意点:
タオルは身体の前後どちらでも問題ありません。肩甲骨を内側に寄せるように行うと僧帽筋・菱形筋など背中全体の運動になります。
    運動を繰り返すだけでは負荷が軽い為、下げ切った状態を数秒~10秒程、力強く維持すると負荷が上がります。

〇下半身

スクワット
〇スクワット
方法:1.足を肩幅か肩幅より少し広めにして、つま先はやや外側に広げます。
   2.お尻を下げていくイメージでしゃがみ込みます。
   3.太ももが床面と水平になるまでしゃがみ込んでから立ち上がります。
回数:10回×2~3
注意点:膝がつま先より前に出ると膝を痛める可能性があります。壁の前でスクワットをすると自然と防止することが出来ます。
    腰が過度にそってしまうと腰痛に繋がります。
    尻もちをつきそうになる場合は、手すりや重めの椅子などを持って行います
レッグカール
方法:1.両足にセラバンドまたは重りをつけた状態で膝を曲げます。
   2.踵がお尻につくまでゆっくり曲げます。
   3.曲げた膝をゆっくり伸ばします。
回数:15~20回×2~3

成人(18~64歳)の適切な運動量(有酸素運動・筋トレ)による効果

【成人の適切な運動による期待出来る効果】

成人(18~64歳)では適切な運動により以下の効果が期待出来ます。

1.総死亡率や循環器疾患による死亡率の低下

2.高血圧やがん ・2型糖尿病の発症予防

3.メンタルヘルス(不安やうつ症状の軽減)や認知的健康

4.眠の質の向上

5.肥満指標の改善

【補足】

1.何もしないよりは少しでも身体活動・運動をした方が良いとされています。

2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。

3.身体活動・運動は少しずつでも良いので行っていき、時間をかけて徐々に頻度・強度・持続時間を増やしていくのが望ましいとされています。

高齢者(65歳以上)の適切な運動量(有酸素運動・筋トレ)による効果

【高齢者の適切な運動による期待出来る効果】

高齢者においても成人と同様に身体活動により以下の効果が期待できます。

1.総死亡率や心臓・血管系疾患による死亡率の低下

2.高血圧やガン2型糖尿病の発症予防

3.メンタルヘルス(不安やうつ症状の軽減)や認知的健康

4.睡眠の質の向上

5.肥満の指標の改善

6.転倒の予防に役立ち、骨の健康身体機能低下を防ぐ

バランス練習・協調練習

身体機能の向上と転倒予防のために、機能的なバランス練習と筋トレを重視した多様な要素を含む運動を週3日以上、中強度以上の強度で行うべきであるとされています。

【座りっぱなしは避けるべき】

座り過ぎは総死亡率や心血管系疾患・ガンによる死亡率上昇心血管系疾患・ガン、2型糖尿病発症の増加といった悪影響を及ぼすことが分かっています。
健康効果を得るために、座っている時間を身体活動に置き換えることを強く推奨されています。

【補足】

1.何もしないよりは少しでも身体活動・運動をした方が良いとされています。

2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。

3.身体活動・運動は少しずつでも良いので行っていき、時間をかけて徐々に頻度・強度・持続時間を増やしていくのが望ましいとされています。(いきなりの激しい運動はケガをする可能性があります)
4.身体機能・体力のレベルに応じて身体活動の強さのレベルを調整して下さい。(最初から無理に高強度の運動を長時間行う必要はありません)

慢性疾患(ガン・糖尿病など)を有する人の適切な運動量による効果

【慢性疾患を有していも運動はすべきである】

身体活動はガン・高血圧・2型糖尿病などの慢性疾患を有する人にとっても健康に効果が期待出来ます。

1.総死亡率・ガンによる死亡率の低下ガンの再発・二次発ガンのリスクを低下

2.高血圧を有する人では心臓・血管系疾患による死亡率低下疾病進行を遅らせる身体機能向上と健康関連を向上

3.2型糖尿病を有する人では、心臓・血管系の疾患と疾病の進行による死亡率を低下させます。

また、慢性疾患を有していても高齢者においては、身体機能の向上と転倒予防のために、機能的なバランス練習筋トレを重視した多様な要素を含む運動を週3日以上中強度以上の強度で行うべきであるとされています。

【補足】

1.推奨量を満たすことが難しい人は、個々の能力に合わせた身体活動・運動を行って下さい。
2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。
3.これらの慢性疾患のある成人は、医者や理学療法士といった医療従事者・専門家に相談して、個々の能力・目的、合併症や制限、服薬している薬などから身体活動・運動の種類と量についてアドバイスを受けてから行うようにして下さい。(※糖尿病末期の人では合併症により高強度の運動が禁忌となる場合などがあります)
4.身体活動・運動の禁忌がない人は、ウォーキング(速歩き)や日常生活の範囲を超えないような軽度~中強度の身体活動・運動を行う場合は医学的な許可は一般的に不要であるとされています。※不安であるならば医療機関を受診しアドバイスを受けるのも選択肢の一つです

障害を有する人の適切な運動量による効果

【障害を有していても運動は必要不可欠である】

障害を有していても運動は必要不可欠です。適切な運動量は一例として以下のような効果が期待出来ます。

1.多発性硬化症患者: 身体機能の改善、身体的・精神的・社会的に生活の質が改善
2.脊髄損傷者 :歩行機能・筋力・上半身の機能向上、生活の質が向上
3.認知機能に障害がある者 :パーキンソン病や脳卒中の発症があった人は身体機能・認知機能の改善

               統合失調症の成人では認知機能の改善・生活の質改善

               知的障害がある人では身体機能の改善

              うつ病の成人では生活の質が改善

【補足】

1.何もしないよりは少しでも身体活動・運動をした方が良いとされています。

2.適切な運動量を満たしていなくても、ある程度の身体活動・運動を行うことで健康効果は得られます。

3.身体活動・運動は少しずつでも良いので行っていき、時間をかけて徐々に頻度・強度・持続時間を増やしていくのが望ましいとされています。(いきなりの激しい運動はケガをする可能性があります)

4.個々の健康状態・身体機能・日常生活の活動量に応じて、適切に身体活動・運動を行う場合は大きなリスクはなく、健康効果がリスクを上回るとされています。

5.個人に適した身体活動の種類と量を決定するためには、医療専門家やその他の身体活動および障害の専門家に相談する必要があるかもしれない。

まとめ

成人(18~64歳)・高齢者(65歳以上)、慢性疾患を有する人・障害を有する人の推奨されている運動量は、1週間で中等度の運動で150~300分、高強度の運動で75~150分です。適切な運動量は様々な健康効果や生活の質が改善することが期待出来ます。

しかし、運動習慣のない人がいきなり推奨されている適切な運動量をこなそうとしても難しいと思われるため、簡単な運動から始め徐々に時間・強度を増やすようにして下さい。

慢性疾患の症状・合併症や障害により長時間・高強度の運動が難しい人においても、運動しないよりは運動をした方が健康効果・疾病の進行予防・身体機能の改善・生活の質の改善が期待出来ますので出来ることを行うようにして下さい。