ダイエットにランニングは不要!?有酸素運動の強度と効果について解説!

私は理学療法士としてリハビリをして働いており、趣味でロードバイクとマラソンをしています。理学療法士としての知識を持ちつつ、ロードレイサー兼ランナーとして持久系のスポーツもしているため身体や有酸素運動の勉強をすることが比較的多いと思っています。

ここでは有酸素運動とダイエットについて解説していこうと思いますので、興味のある方は参考にしてみて下さい!

ダイエットの意味は、適正体重に近付けることを言います。なので痩せている人にとっては体重を増やすことをダイエットと言いますが、ここでは体重を落とす意味としてダイエットという言葉を使うことにします。

「肥満体型を解消したい・「スリムになって異性にモテたい」・「医者に痩せなさいと言われた」などなどダイエットを始める理由は人それぞれです。ダイエットについて最も大切なのは、その生活習慣・食習慣・運動習慣を継続出来るのかどうかです。

体型というのは日々の生活習慣・食習慣・運動習慣の現れといっても過言ではありません。たとえ、一時的にダイエットのために極端な食事制限・激しい運動を継続し、ダイエットに成功したとしても食習慣・運動習慣を元に戻してしまえば体型は元に戻ってしまいます。

ダイエットは単発の短距離走ではなく、長期間継続するマラソンのつもりで行わなくてはいけません。

今まで運動習慣の無かった人にとって、【ランニング】というのはきつく・激しい運動になります。多くの人の場合、健康の為に【きつい・激しい運動を継続】することは中々難しいものです。自転車競技に出る・マラソン大会に出る・トライアスロンに出るなどの運動そのものが目的ではなく、ダイエットを目的とした有酸素運動でランニングは多くの人にお勧め出来ません。

ランニングはダイエットをするにあたって真っ先に思いつく運動の1つですが、多くの人にとってランニングはきつい運動ですので、「ランニングをサボってしまった・継続出来なかった、継続出来なかった私は意思の弱い人間だ」などダイエットそのものを止めてしまうことにも繋がってしまいます。

多くの人の場合、ダイエットを継続するために、意思が弱いのではなく知識が足りないのだと思われます。次にダイエット初心者にお勧めの有酸素運動をお伝えします。

ダイエットは単発で頑張るのではなく、継続出来る内容が大切!

ランニングはきつい運動なので、多くの人にとって継続するのが難しい!

普段から運動習慣のない人にとってランニングはきつい運動で継続することが難しいです。

そのため、運動初心者にお勧めの有酸素運動として、【ウォーキング(速歩き)】【サイクリング】が挙げられます。ウォーキングは多くの人にとって「ややきつい」と感じる運動強度であり、脂肪燃焼が生じやすい運動の1つです。

ウォーキング(速歩き)は、身体を起こして両手を大きく振り、少し大股で踵からつくように意識して歩くことをお勧めします。運動強度の目安として、【少し息切れがあるけど会話が出来る】、または主観として【ややきつい】と感じる程度と言われています。【息切れが全くしない・かなり余裕がある】という人は歩く速度を速く、【会話が難しい・きつい】と感じる人は歩く速さを遅くする、というように調整することで継続しやすく・効率よく脂肪燃焼を促すことが出来ます。ウォーキングの時間として、最低でも20分以上歩くことをお勧めします。

運動初心者の多くの人にとって、ウォーキング(速歩き)がダイエット・脂肪燃焼にお勧め!

【少し息切れがあるけど会話が出来る】【少しきつい】と感じるスピードで歩いてみて下さい。

※運動やダイエットのメカニズムについて知りたい方はさらに以下を参照して下さい。

身体を動かすには筋肉の収縮が必要です。筋肉を収縮させるにはエネルギーのことをATPと言います。しかし、筋肉に蓄えることが出来るATPは非常に少なく運動開始2~3秒で使い果たしてしまいます。そのため、運動を行いながら筋肉内でATPを作っていく過程が必要であり、筋肉内でATPを作っていくには3つの方法があることが分かっています。

クレアチンリン酸系

クレアチンリン酸系とは、筋肉に蓄えられているクレアチンリン酸を分解することでエネルギー(ATP)を生成します。クレアチンリン酸系は非常に速い速度でATPが可能であり、短距離走ジャンプなどの瞬発的な運動時のエネルギー源となります。しかし、筋肉内に蓄えられているクレアチンリン酸系も非常に少量であるため、7~8秒程しか運動は持続出来ないと考えられています。

解凍系

 解糖系では糖質を摂取すること生成された筋肉に蓄えられたグリコーゲン、または血液中のグルコースを分解することでATPを生成することが出来ます。クレアチンリン酸系と解糖系は酸素を必要とせずATPを生成するため無酸素性エネルギー供給機構とも呼ばれています。また、解糖系の反応が高くなり、グリコーゲンやグルコースの分解が極度に高まると乳酸が蓄積し始めます。

有酸素系

内臓脂肪や皮下脂肪などの脂肪組織で分解された脂肪酸、筋肉内に貯蔵されている中性脂肪から供給される脂肪酸でATPを生成する経路を有酸素系と呼びます。酸素を利用してATPを合成するエネルギー供給機構であるため有酸素性エネルギー供給機構とも呼ばれます。有酸素系は安静時や長時間運動時の主なエネルギー供給源となります。

運動強度と運動時間がATP生成に関わる割合

クレアチンリン酸系・無酸素系・有酸素系のATP生成は、運動強度と運動時間により貢献度が変化すると言われています。短距離走やマシンを使用した筋トレといった高強度・短時間の運動では、クレアチンリン酸系や解糖系が中心となります。ウォーキングやサイクリングのように運動強度が低い運動は長時間持続することが可能であり、有酸素系のATP生成が主なエネルギー源となります。

運動強度とエネルギー消費の割合
青枠ー有酸素系 赤枠ー無酸素系

歩くといった低強度の運動では、血液から取り込まれた脂肪酸や筋肉に貯蔵している中性脂肪などが主な有酸素系がエネルギー源となっています。運動強度が上がり、ジョギングのような中強度な運動では筋グリコーゲンの利用割合が上昇します。さらに強度が高いランニングのような高強度な運動では、筋グリコーゲンが主なエネルギー源となります。

中強度・高強度の運動では筋グリコーゲンが枯渇した時点で疲労困ぱいとなり、運動を継続できなくなってしまいます。疲労困ぱいになると、筋肉や内臓に脂肪が蓄積されているにもかかわらず運動が難しいため、脂肪燃焼のための運動が継続出来なくなります。

運動強度を客観的に調べると方法として心拍数を利用する方法があります。調べる方法は安静にしている時の心拍数と運動した時の最も高い心拍数をもとに運動強度を決めます。

最低心拍数:安静にしている時の心拍数(睡眠時・起床後の心拍数が望ましい)

最高心拍数:限界と感じるところまで高強度の運動を続けた時の最高の心拍数

※心拍数の測定方法:心拍数≒脈拍数であり脈拍を測定することが多いです。脈拍数は人差し指・中指・薬指の3本で反対側の手首の外側を抑えます。拍動を感じたら1分間で感じる拍動の回数を数えます。

安静時心拍数からの運動強度の計算

カルボーネンの式:[220ー年齢ー安静時心拍数(回/分)]×運動強度(%)+安静時心拍数(回/分)で求めることが出来ます。

脂肪燃焼に最も効果的なのは運動強度が最大パフォーマンスの60%前後と言われています。

40歳で安静時心拍数が80回/分である場合、脂肪燃焼に最も効果的な心拍数は以下の通りになります。

(220ー40ー80)×0.6+80=140

運動をしている時の心拍数が140回/分となるような強度で行うと効果的であるということです。

最大心拍数からの運動強度と効果

有酸素運動ゾーンというものがあります。最大心拍数を基準にして運動強度を区分しているものであり、特定のゾーン内で運動を行うことで、脂肪燃焼・持久力の向上・心肺機能向上などのそれぞれ異なる効果が得られます。

有酸素運動:ゾーン1ー回復ゾーン(最大心拍数の50~60%以下)

有酸素運動:ゾーン2ー脂肪燃焼ゾーン(最大心拍数の60~70%)

有酸素運動:ゾーン3ー持久力向上ゾーン(最大心拍数の70~80%)

有酸素運動:ゾーン4ー心肺機能向上ゾーン(最大心拍数の80~90%)

有酸素運動:ゾーン5ー無酸素ゾーン(最大心拍数の90~100%)

散歩や平坦をゆっくり漕ぐサイクリングなど、ゆっくりとしたペースで行う運動がこれに当たります。このゾーンは血流を促進することで、運動後の疲労回復や筋肉の修復を助けます。負担が非常に少ないため、運動初心者でも日常的な運動習慣として取り入れることができます。

最も効率よく脂肪を燃焼させる心拍数ゾーンとして知られています。運動時に必要なエネルギーの大部分を内蔵や筋肉内の脂肪が供給するため、ダイエット目的や脂肪減少を目指す人にとって効果的な強度と言えます。速歩きやサイクリングなどがこのゾーンに入ることが多いと言われています。

心肺機能向上や持久力強化を目指す有酸素ゾーンです。このゾーンでは、脂肪と炭水化物の両方がエネルギーとして使われるようになり、より高い強度で長時間の運動が可能です。心肺機能を強化し長時間運動を続ける能力を向上させます。マラソンなど、持久力を必要とするスポーツに取り組む人にとって重要なゾーンであると言えます。

身体の乳酸を処理しきれなくなり蓄積してくるギリギリのポイントであり、乳酸閾値と言ったりします。このゾーンでのトレーニングは乳酸の蓄積を管理し、持久力とスピードの向上を目指すトレーニングです。

このゾーンはギリギリ乳酸がたまらないので、長時間運動を続けることが出来ますが集中しないと持続が難しく、しんどい状態が続きます。

このゾーンは、非常に短期間の全力運動を行う際に到達します。エネルギー供給は主に筋グリコーゲンの分解によって行われ、乳酸が一気に溜まってしまって運動を長時間続けられなくなってしまいます。短時間で最大限の力を発揮するために必要な爆発的な筋力とスピードを鍛えることが可能であり心肺機能の限界を引き上げます。

Apple Watch(アップルウォッチ)Garmin(ガーミン)のような腕時計は装着するだけで、脈拍数や運動量・消費カロリーなどを測定したりすることが出来るものがあります。また、測定した脈拍数や運動量を【ヘルスケア】【Connect】というアプリと連動させることで、日々の脈拍数や運動量を自動的に記録することが可能であり、結果を数値としてみることが出来ます。

結果を数値としてみることは自分自身を客観視することが可能であり、モチベーションの維持にも繋がります。運動・ダイエットを続ける自信がない人は購入とアプリの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

人の脂肪は大きく分けて内臓脂肪皮下脂肪に分けられます。内臓脂肪は食べすぎや運動不足・不規則な生活習慣などが原因で蓄積されます。しかし、生活習慣を改めたり、運動することですぐに燃焼することが出来るため落ちやすい脂肪と言えます。

問題は皮下脂肪です。皮下脂肪は全身につく脂肪であり、日々のカロリーオーバーの結果徐々についてくる脂肪です。皮下脂肪を落とすには大変な労力が必要であり、1㎏の皮下脂肪を落とすのに約7200kcalの消費が必要であると言われています。個人差はありますが、基礎代謝(生命維持に必要な消費カロリー)は1時間あたり体重分であると言われています。また、1時間歩き続けた際の消費カロリーは約300kcalと言われています。

以上から体重60㎏の人が1時間歩いた日の1日当たりの消費カロリーは60×24+300=1740kcalとなります。仮に一日何も食べずにいたとしても皮下脂肪を落とすのに約4日かかるということです。実際は、食事をとらないと栄養失調で倒れたり、筋肉量が著しく減少し基礎代謝が落ちたりするので食事をとらなければいけないので皮下脂肪を1㎏落とすのはもっと遅くなります。

1日で-約500kcalを継続し続けることで脂肪のみを落とすのに約14日かかり、1ヶ月で約2キロです。

「1ヶ月で5キロ体重を落とす(脂肪のみを落とす)」というのが現実的にほぼ不可能です。この現実を知り、少しずつしか体重は落ちないことを頭に入れて継続できるダイエットを行っていくことが大切です。

1.皮下脂肪を落とすのに約7200kcal消費する必要があり、少しずつしか脂肪は落ちない。

2.自身が継続出来るダイエットを行うが大切!!

1.Fox E.(1979)『Sports Physiology』Philadelphia, Saunders.
2.Romijn, J.A., et al.(1993)「Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration」『The American journal of physiology』265(3 Pt 1):pp. E380-E391.