【椎間板ヘルニアとは?】メカニズム・症状・治療・対策を解説!!

このブログ記事を見つけた方は、もしかしたら自身が椎間板ヘルニアと診断された、もしくは周囲の身近な人が椎間板ヘルニアと診断されたのかもしれません。

この記事では理学療法士として、椎間板ヘルニアの経験者として椎間板ヘルニアについて解説していきます。

椎間板ヘルニアのメカニズムについて解説していきます。

椎間板とは、一つ一つの背骨の間にあるスポンジ様のクッションのことを言います。(上図の水色部分)

ヘルニアとは、体内の臓器などが、本来あるべき部位から「脱出・突出」した状態を指す。

つまり、椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板が本来ある部位から突出した状態を指します。

椎間板というスポンジが突出したせいで、すぐそばにある脊髄を圧迫してしまうことで症状が出てきます。

首の部分で椎間板が突出して症状が出ていれば頸椎椎間板ヘルニア、腰の部分で椎間板が突出して症状が出ていれば腰椎椎間板ヘルニアというわけです。

椎間板は水分を豊富に含んだ弾力のある成分で構成されています。水分を多く含み、弾力に優れているため背骨にかかる圧力・負担を軽減させる役割があります。

しかし、床にある重たいものを持ち上げる・重たい人を介護するなど、腰に過度な強い力が入ったり、負担がかかったりすると衝撃を吸収しきれず、椎間板が突出してしまいます。

体幹や足の筋肉が弱い人は筋肉で身体を支えきれずに、背骨・椎間板に過度な負担がかかってしまい椎間板ヘルニアのリスクがあります。

猫背気味の人は横から見た時の腰骨の前彎(従来なら腰骨の並びは少し後ろに反っている)が小さく、衝撃が吸収しきれずに椎間板ヘルニアのリスクが高くなります。

重たいものを持つ仕事・人の介護する仕事・体幹や足の筋肉が弱い人・猫背気味の人は椎間板ヘルニアがのリスクが高いので注意して下さい。

椎間板ヘルニアは約60%以上が自然に回復すると言われています。椎間板ヘルニアは必ずしも手術が必要になる疾患ではありません。椎間板ヘルニアが生じても、体内の免疫細胞が突出した椎間板を吸収することで、圧迫されていた神経が軽減されるためです。時間の経過とともに痛み・症状が和らぎ、日常生活に支障が出なくなるケースが多くみられます。

しかし、椎間板ヘルニアが生じてしまった原因を取り除かないことには、椎間板ヘルニアの自然回復が難しい可能性があります。椎間板ヘルニアが生じてしまった原因が、重いものを持ち上げることが多い、中腰の作業が多い、長時間の立ち仕事・座り仕事など思い当たる節がある場合、それらを改善させる必要があります。自身で改善出来ることなら実行し、自身で難しいことなら周囲の人・仕事なら上司に相談してみましょう。

椎間板ヘルニアは高齢者ではなく、意外と若い人に多いものです。頸椎椎間板ヘルニアは30~50代に多く、腰椎椎間板ヘルニアは20~40代に多いと言われています。

椎間板ヘルニアは以外と若い人に多いため、注意が必要です。

椎間板ヘルニアは椎間板が本来ある部位から突出することで脊髄を圧迫することで症状が出ます。

そのため、椎間板ヘルニアの症状は神経由来のものがほとんどになります。

神経は脳から脊髄を経由して全身に分布しています。頸椎椎間板ヘルニアではヘルニアが生じた首から下に症状が出ることがあるのでほぼ全身、腰椎椎間板ヘルニアでは腰から下半身に症状が出ます。

椎間板ヘルニアの症状

【1.痛み】

軽度の腰痛から中等度~重度の神経痛まで痛みの症状は様々です。

頸椎椎間板ヘルニアでは首から下の部分、腰椎椎間板ヘルニアでは腰から下に痛みの症状が出る可能性があります。

筋肉にツッパリ感による軽度の痛みが出ることもありますが、脊髄の圧迫が強くなり神経痛が出てくるとナイフで刺されるような・焼かれるような痛みが出てきます。

【2.運動麻痺】

運動は脳から神経を通じて筋肉に指令が届くことで出来ます。しかし、椎間板ヘルニアのように脊髄で圧迫されてしまうと脳からの指令が十分に届かなくなり、重度になると足の力が入りにくい、つま先が上がりにくいなどの運動麻痺や歩きにくいといった歩行障害が出る可能性があります。

【3.感覚麻痺・異常】

人の感覚は全身に感覚を感知する受容器がそれぞれ反応し、神経を経由して脳に伝わることで感覚として認知します。手足の痺れや感覚が鈍くなるなどの症状が生じるようになります。足の痺れは砂浜の上を歩いているような感覚です。感覚の鈍さ・消失はバランス感覚の低下に繋がり、転倒リスクなどが高くなってしまいます。

【4.排尿・排便障害】

重度の椎間板ヘルニアになると排尿・排便障害が生じると言われています。膀胱や排尿を司る神経を圧迫することで、頻尿・残尿感・尿が出にくい、便秘、便失禁などが生じます。症状が重い場合は、緊急手術が必要になることもあります。

椎間板ヘルニアの治療方針は基本的に保存療法です。しかし、重度になってくると手術療法が選択肢に入ってきます。

保存療法

【薬物療法】

薬物療法は痛みや炎症を抑える薬を使用します。

薬の代表的なものは、非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩薬、鎮痛薬などです。

痛みや炎症、筋肉のツッパリ感を抑えることで痛みなどの症状を緩和を促します。

【理学療法】

理学療法士という専門によって、機能回復と症状の緩和を目指します。

椎間板ヘルニアは、姿勢が崩れていたり、首~肩周り、腹筋と背筋、足腰などの筋力低下が原因で生じていることもあるため、筋トレやストレッチなどで姿勢の改善や筋力強化・柔軟性改善を図り、症状の改善や再発予防を目指します。

 

【コルセット】

腰椎椎間板ヘルニアではコルセットを使用することで、腰の負担を減らすことが出来ます。

これは、コルセットが腹筋周りの筋肉をサポートし、腹圧を高めることで腰部分の背骨の負担を減らすことが出来ます。しかし、長期間コルセットを使用すると本来腹圧を高める筋肉の筋力低下・機能低下が生じるという報告もあるため、必要以上の使用は控えることをおススメします。

【神経ブロック注射】

神経ブロック注射は、痛みを伝える神経の近くに麻酔薬を注射することにより、痛みの信号を脳に伝えることを抑制し痛みの軽減を図ります。また、炎症を抑える薬を注射することで、神経の炎症を抑えて痛みを和らげることが出来ます。

神経ブロック注射を行っている時は弱くはない痛みを伴うため、「すごく痛かった」という反応を示す方もいらっしゃいますが、神経ブロック注射により鎮痛効果が期待出来ます。

手術療法

椎間板ヘルニアの手術は、突出した椎間板を摘出する方法と、レーザーや酵素注入で椎間板の圧力を下げてヘルニアを引っ込ませる方法があると言われています。

手術療法が選択肢に入ってくるのは、保存療法で症状が改善しなかった場合や、強い運動麻痺や排尿・排便障害などの症状が出た場合です。

【ヘルニアの摘出術】

摘出術は突出した椎間板を摘出することで、圧迫されていた神経を解放することで症状を緩和させます。医療の発展に伴い、開腹手術から内視鏡手術へと低侵襲なものが増えています。手術は出来る限り侵襲が少ない方が回復が早いと言われています。

【椎間板縮小術】

レーザーで椎間板の一部を蒸発させ椎間板内の圧力を下げてヘルニアを縮小させるレーザー治療、酵素を含んだ薬剤を注入し、椎間板の組成を変化させてヘルニアを縮小させる椎間板内酵素注入療法があります。

【手術療法のメリット】

ヘルニアの摘出術では神経の圧迫を確実に解除出来ます。

保存療法で改善出来なかった場合、手術を選択することで改善出来る可能性があります。

【手術療法のデメリット】

手術をしている時に神経に触れてしまい神経損傷が生じたり、手術による感染症・血栓症などのリスクがあります。

手術を行っても必ずしも症状が改善するとは限らず、症状が残ることがあります。

手術費用や入院費用など、ある程度のお金がかかります。

椎間板ヘルニアの予防・悪化防止・再発予防のためには正しい知識を身に付けて対策する必要があります。椎間板ヘルニアは過度に負担が生じたり、悪い習慣の積み重ねにより生じるため以下のことに気を付けて下さい。

姿勢に気を付ける

長時間の同じ姿勢は筋肉や腰に負担がかかってしまいます。また、立っている姿勢よりも座っている方が腰の椎間板への圧力は以外と強いものです。

そのため、デスクワークなどで長時間座っている場合は細目に姿勢を変える休憩時間に立ち上がるなどの姿勢を変えることが大切です。

適度な運動

適度な運動は腰周りの筋肉を強化し、椎間板ヘルニアの対策に繋がります。

1.正しい姿勢のウォーキングは過度な負担をかけずに腰周りの筋肉強化や全身の筋肉強化・血行促進が期待出来ます。

2.水泳は浮力によって関節・椎間板などに負担をかけずに出来る運動であり、椎間板ヘルニアの方にもおススメされている運動です。

3.腹筋・腰周りの筋肉強化は椎間板ヘルニアの対策として有効です。しかし、上体起こしなどの負荷の大きい腹筋運動などは椎間板ヘルニアの悪化に繋がる恐れがある為、腹式呼吸でお腹を引っ込めるなどの低負荷の運動が有効です。

ストレッチ

ヒトの骨は関節を通じて全身繋がっています。姿勢不良による関節の歪みは周囲の関節にも負担を増やしていまうなどの影響を与えてしまいます。そのため、姿勢の改善や関節の歪みを矯正するためにもストレッチは椎間板ヘルニアの対策として大切です。

猫背は胸辺りにある胸椎といわれる関節の丸みが強くなり、腰の関節(腰椎)も影響を受けてしまいます。その結果、腰の椎間板に圧力が強くなり、椎間板ヘルニアのリスクが高くなってしまいます。猫背の改善に向けて肩甲骨を内側に寄せるようなストレッチを行うと効果的です。

骨盤周りや太もも前・後ろの筋肉の柔軟性低下は骨盤のゆがみに繋がり、そばにある腰も骨盤に引っ張られてしまい、腰の負担が増えてしまいます。骨盤の歪みを矯正するためにも、骨盤~足にかけてのストレッチが有効です。

体重の管理

肥満体型はお腹の重心が重くなり、腰の椎間板の圧力が強くなってしまいます。そのため、肥満解消に向けての適度な運動や食事制限を行い、体重を管理することで椎間板ヘルニアの対策に繋がります。

禁煙

喫煙は椎間板への血流を阻害させ、椎間板に必要な栄養や酸素が十分に行きわたらないことで、椎間板の変性につながる可能性があり、ヘルニアの悪化・長期化につながる可能性があります。

喫煙者は非喫煙者に比べて、椎間板ヘルニアの再発率が高いという報告もあるため、椎間板ヘルニアの予防・悪化防止には禁煙することをおススメします。

重いものを持ち上げる際の要注意

椎間板ヘルニアの方は重いものを持ち上げたり、中腰の姿勢で圧力が強くなるため出来るだけ避けるべき動作です。

しかし、どうしても職業柄重いものを持ち上げないといけない時は、腰を曲げて持ち上げるのではなく片膝を曲げて重心を下げてから持ち上げることで負担を少なくすることが出来ます。

また中腰で作業しないといけない人は、両足を外側に広げることで膝を曲げることなく重心を下げることが出来ます。

コルセットの着用

腰椎椎間板ヘルニアではコルセットを使用することで、腹圧を高め腰部分の背骨の負担を減らすことが出来ます。

椎間板ヘルニアとは背骨の間にある椎間板が本来ある部位から突出した状態を言います。

本来ある部分から突出した椎間板が脊髄を圧迫することで、運動麻痺・感覚麻痺・痛み・排尿排便障害といった様々な症状が生じます。

椎間板ヘルニアの約60%以上は自然に回復します。そのため基本的な治療方針は服薬やリハビリ・コルセットといった保存療法ですが、保存療法で改善が出来なかった場合は手術療法が選択肢に入ります。

椎間板ヘルニアの予防・悪化防止のためには、長時間の同じ姿勢を避ける・適度な運動とストレッチは基本であり、肥満体型の人は体重を管理し、喫煙者は禁煙することをおススメします。